歯科で活躍する管理栄養士のStepUpストーリー

あかま歯科クリニック様(福岡県直方市)

30年以上にわたって、地域の方々の口の健康のみならず、心身の健康づくりにも寄与してきたあかま歯科クリニック。3年ほど前から管理栄養士が常勤し、「もぐもぐ日記」を活用した食事指導をおこなっています。歯科診療においてどのように管理栄養士としての役割を果たしているのか、「もぐもぐ日記」をどのように活用しているのか、管理栄養士の西尾早耶香さんにお話をうかがいました。

管理栄養士の西尾さんが、新卒で歯科医院勤務を選んだ理由

もともとは小学校の栄養教諭を目指していました。子どもたちに食育を通じて、食の大切さを伝えていきたいと思い、大学で栄養教諭免許を取り、管理栄養士の資格を得ました。しかし小学校の栄養教諭は就職倍率がとても高く、狭き門でした。

何か他に子どもの食育に携われる職はないかと探していたところ見つけたのが、当院の求人でした。ちょうどクリニックをリニューアルして、2階に患者さまが使えるようなキッチンができると聞き、ここでなら自分の夢を叶えられるかもしれないと思ったのです。

新卒管理栄養士が歯科医院で最初に携わった業務

歯科助手のアシスタントです。栄養士の資格取得カリキュラムでは歯科のことは学習しなかったので、最初は歯の本数もあいまいな程度の知識でした。管理栄養士として歯科治療に貢献するためには、まずは口腔内の知識を身につける必要がありますので、ほかのスタッフに教えてもらったり、歯科の専門用語の勉強をしたりするなど、時間を惜しまず取り組んでいました。
ただ、当院で採用された管理栄養士は私が初めてで、県内でも管理栄養士がいる歯科医院は珍しいという状況でした。ほかのスタッフは私との関り方を考えたでしょうし、私自身も管理栄養士として何をどう始めていけばよいのか、悩むことが多くありました。

歯科医院内での管理栄養士業務のスタート

院長の予防歯科に注力するという方針が明確に示されており、クリニック全体で食育に取り組もうという意識があったので、患者さまの食育にどのように関わっていくのかということをスタッフ間で話しあえる環境がありました。むし歯のリスクが高いお子さまに食事指導をする機会も増えていき、おやつに含まれる砂糖の量をペットボトルに入れて見せて、視覚に訴える工夫などをとり入れました。すると「おやつは二度と食べないぞ」と宣言してくれたり、定期健診で来院するたびに「キャラメル食べていないよ」と私のところまで報告しにきてくれたり嬉しいことが続き、管理栄養士としてのやりがいを感じるようになっていきました。

「もぐもぐ日記」との出会い

入職して1年くらいが経ったころです。歯科衛生士から「もぐもぐ日記」という歯科医院での食事指導に便利そうなアプリがあると教えてもらいました。それまでも食事指導のなかで患者さまに食事写真を撮ってもらい、来院時にそれを見せていただくことはありましたが、「もぐもぐ日記」は登録された写真を事前に確認できるので、使いやすいなというのが率直な感想でした。

「もぐもぐ日記」の患者さまへのご案内

歯の治療のために歯科医院に来院し、食事指導を受けるというイメージを持っていない患者さまに対して管理栄養士として食事の話をする事や「もぐもぐ日記」をご紹介するためには工夫が必要でした。クリニックの待合のモニターに「もぐもぐ日記」の動画を流したり、院内に案内の冊子を置いたりすることで、お子さまたちからはクマのキャラクターが人気になりスムーズに使ってもらうことができ、食事指導につなげることができました。試しに始めてみると、食事記録を続けるともらえるメダルが嬉しいみたいです。

それから高齢の方にも多く使っていただいています。当院では口腔機能の検査を実施しているのですが、そこで口腔機能低下症が見つかった方に口腔機能管理の一環として食事指導を実施しています。そこで「もぐもぐ日記」での食事記録をご案内しています。高齢の方はこうしたアプリを使うことを躊躇することがありますが、「もしよかったら勉強させてもらえませんか?」とお願いすると「勉強のためなら協力してあげよう」という気になってくださるようです。こちらが“指導する”というよりも、“勉強させていただく”という姿勢を示すほうが、受け入れてもらいやすいと感じています。

「もぐもぐ日記」を活用したことで得られたコミュニケーション事例

もぐもぐ日記の写真データを確認していたら、カップラーメンを召し上がる機会が多い患者さまがいらっしゃいました。この食生活をしていたら血圧が高いのではないかと思い聞いてみたら、「降圧薬を飲んでいるよ」とおっしゃって。服用中の薬や持病については治療の前に確認しますが、歯科とは関係ないと思って問診表に書かない方もいるようです。もぐもぐ日記の写真がきっかけとなり、服薬の正しい状況を確認することができました。

また、もぐもぐ日記を使って食事についてのアドバイスをしているなかで、「実は入れ歯のバネの色が気になっている」とか、「前歯のかぶせものの色が気になる」と話してくださった患者さまがいました。そこでバネを使用しない入れ歯やセラミックをご提案して次の治療につながったという例もあります。「もぐもぐ日記」が患者さまとのコミュニケーションを促進するツールのひとつにもなっています。

口腔機能検査の声掛け方法

当院では50歳以上の方に管理栄養士が直接お声がけしています。費用を気にされ、健康保険が適用されるなら受けてみたいという方が多かったので、「お口の健康診断」のポスターを作成し、「保険適用」と明記しました。

院内にポスターを貼るようになってから、検査を受ける患者さまが増えました。その結果口腔機能低下症と診断され、食習慣に課題を抱える方が多くいらっしゃる事が分かりました。

その方に、もぐもぐ日記を使っていただくと、食事内容がやわらかいものから硬いものに変化したり、いろどりがいい食事に変わっていったりするのが写真によって目に見えてわかります。

例えば適切な入れ歯に変えた方の食事内容の変化が目に見えて分かるのは私たちも評価しやすいですし、患者さまの励みにもなっているようです。

「もぐもぐ日記」の今後の活用方法

最近、口腔機能発達不全症のお子さまにも活用し始めました。また、お子さまの予防矯正には食生活が大事だと言われているのですが、そのための食事指導にも、もぐもぐ日記が役立つのではないかと考えています。唾液検査を受ける患者さまの食事記録など、まだまだ活用できる場面は多くありそうです。

入職3年。歯科医院勤務での管理栄養士の役割。

管理栄養士がひとり、栄養士もひとり加わり、現在は3名体制で食事指導を担当しています。私自身は現在、クリニックの広報の仕事にも携わるようになりました。また、半年ほど前から食育のひとつとして、クリニックのキッチンで小学生を対象にした料理教室「しろくまキッチン」を開催しています。栄養士の人数が増えたおかげで、参加募集人数を増やすことができました。最初は参加者を集めるのが大変でしたが、いまは定員を超える申し込みがあり、抽選にしなければならないほどです。参加したお子さまの親御さんたちからは「苦手だった野菜にも向き合えるようになった」「家のキッチンでも手伝いをしてくれるようになった」といった嬉しいお言葉をいただいています。こうした料理教室をやっているという情報は地域の方たちにも広がって、それを機に興味を持って来院してくださる方も増えています。

また4歳~12歳を対象に、月に1回、歯みがき指導や食事指導をする「しろくまスクール」も開催しています。保険診療内で実施しているのですが、こちらもすぐに定員がうまってしまいます。実はしろくまスクールを開催している日は、子どもの診療枠があくのです。その分、大人の患者さまの予約を受けられるので、親御さんが診察されるなど経営面にもよい影響があります。

管理栄養士が歯科医院で働くことについて

もともとは歯科医院で働くことは想定していなかったわけですが、勤務を重ねるうちに、歯科医院こそ管理栄養士が活躍できる場だと思うようになりました。出会ったときにはむし歯があったお子さまが、やがて歯みがきをがんばるようになり、好き嫌いの改善にもつながり、今も定期健診で長く通っていただいています。「早耶香先生」とか「おねえちゃん先生」と呼んでくれて、かわいいお子さまばかりです。患者さまと長く関われることは、歯科医院で働く喜びのひとつだと思っています。

歯科衛生士・赤間愛美さんより

「むし歯になるから砂糖はよくない」「高齢の方はたんぱく質を摂ったほうがよい」ということだけではなく、その先の方法を示してくれるのは管理栄養士ならではの専門性だと思います。食事指導を通して患者さんと密なコミュニケーションが取れるのも西尾さんのすごいところ。管理栄養士としての能力が高く、専門的な知識が豊富なので食事指導の面で本当に頼りになります。口腔機能管理と合わせて食事指導として患者さまに「もぐもぐ日記」の活用を広めていったり。まさに“相棒”という感じです!

当院は予防歯科に力を入れていますが、クリニックだけにとどまらず、しろくまキッチンやしろくまスクールのほか高齢者向けセミナーを開催するなどして、地域全体の健康増進にも力を入れていきたいと考えています。その点でもますます管理栄養士の西尾さんの存在を頼りにしています。